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ぴくしぶ





更新更新ー

※attention※

続きから年の差りーくる。
すごい長いです。
陸上部?先輩?何それ美味しいの?
以上大丈夫な方はどうぞ。

どんな反応が来るか今から怖いんですよねぇ。
何も反応がないと逆にそれはそれで怖いし。
【あの日から始まってた】

いつだったっけ。
最初に見かけたのは。
それこそ記憶を辿らないと解らない程昔のことだ。
確かブランコに乗っていたのが1番初めに見た彼女だった気がする。
二度見した。いい歳したお姉さんがブランコに乗っている。
二度見するには充分だった。その時はそれで何もなく家に帰った。
翌日、同じ公園で今度はベンチに座って本を読んでいる彼女を見た。
家が近いんだろう。特にその日も深く考えもしないで家に帰った。
それから数日。
公園であの人を見かける日も少なく、どこか安心していたのかも知れない。
その日は朝から雨だった。
帰り道、いつもの通学路。公園を何気なく見ると。
例の女の人はそこにいた。しかも。
傘も差さず。あたしは気が付いたらその人に傘を差し出すようにして立っていた。
「風邪引くよ?お姉さん」
下を向いていた彼女と目が合う。
あ、美人。
子供心に思いながら、差し出した傘が戻されるのを感じた。
「貴女は?それに、傘に入れて貰う訳にも行かないわよ」
「でも!」
「ほら。早く帰らないと、ね?」
強引に帰そうとする。その間にも彼女の身体は濡れていく。
何か嫌だった。だからだろう、口は勝手に動いていた。
「最近お姉さん、よくここにいるけどこの辺に住んでるの?」
「そんなこと、貴女に関係あるの?」
「ある。あたしの家近いし、お姉さん帰らないつもりなら傘ぐらい家から持ってくる」
今思えば何を言ってるんだと思う。
傘を貸したところで、あの時点でもうあの人には傘が意味を成していないことぐらい見て解っていたのに。
「…」
「あ、えと。だからその」
「そう、ね。ずぶ濡れで帰るのも色々可笑しいし、ね。お言葉に甘えようかな?」
気を遣わせたかも知れない。
あの時の笑顔はまだ本当の笑顔ではなかったから。



「着いたよ、ここがあたしんち」
「あ、立派なお家なのね」
着くまでに話したことといえば、お互いの名前と年齢ぐらいなもんだった。
あたしの傘は家に着くまで、彼女に持って貰うことになった。
最初は勿論遠慮したのだが。
結局、傘は彼女の手に渡る。
「持って貰ってありがと。悠里…さん」
「いいのよ。何?名前、呼び慣れないの?」
「あ、いえ。そんなことは!」
「うふふ、胡桃ちゃん可愛いわね。私も妹欲しかったなー」
家に上がってから、彼女はそんなことを言う。
自分にお姉ちゃんがいたらこんな人なんだろうか。ふと思った。
「あ、待ってて。今タオル持ってくる」
家の中は誰もいない。パパは仕事だ、ママもパートに行ってて、夜は遅くなる。
チラッと振り返る。
「…あ、お構いなく」
そんなことはないだろうに。あたしは声をかけていた。
「制服も乾かさないとダメだよね…どうしよっかなー」
「そんな、いいのに」
「そういう訳にも行かないでしょ。ただ制服ってすぐ乾かないからさ」
「ええ。だから気にしなくても」
「ダメだよ。パパもママもいないし、乾くまでいなよ、悠里さん」
「胡桃ちゃんがそう言うなら…ご両親、共働き?」
「うんー」
質問には適当に返事を返す。
タオルと着替えを持ちながら1つの部屋に案内する。お風呂場だ。
やっぱり身体は冷えてると思うから。
最初は断られたが。
「胡桃ちゃんと一緒に入るならいいわよ?」
「あ、あたしと?」
「嫌?」
「うっ…悠里さんズルい。解ったよ、入る」
押し切られてしまう。
誰かと一緒に入るなんていつ以来だろう。
ふとそんなことを思いながら、彼女が声をかけていることに気付く。
「胡桃ちゃん。お風呂に誘った私が言えた義理じゃないけど、あんまり知らない人を家に上げちゃダメよ?」
「あ、うん。そうだけど、でも」
「でもじゃないでしょ?」
「悠里さんはどう考えても悪い人には見えないから」
なんて。彼女に笑顔を向けたのは幼さ故の純粋な心がそうさせるのだろう。
一瞬、呆気に取られたような顔をしたあの人はすぐに。
「それは、まあいくら私でも小学生には手なんて出さないけど」
なんて、言葉にしていた。
もしあたしがもっと年齢が上だったらどうなんだろう?その時は聞くことはなかった。



「悠里さん綺麗だよねー。何かしてるの?」
お風呂で彼女を洗いながら…ちなみにあたしも彼女に洗われた。お互い様というやつだ。ふと疑問を口にする。
顔も美人だけど身体も物凄く綺麗だったのだ。
「私は胡桃ちゃんの肌の方が羨ましいけど」
「それ、さっき聞いたよー」
「そうなんだけど、ね」
急に振り向くのは心臓に悪い。思わず顔を逸らしてしまう。
「と、ところで悠里さんてさ。勉強出来る、よね?」
「どうしたの?突然」
「えっと。制服乾くまで勉強見て貰えないかなーって」
「ええ、いいわよ。教科は?」
「聞いてよ、悠里さん!今日算数の宿題たくさん出てさ」
「算数苦手?」
苦笑いを浮かべて肯定を示す。あんなの、将来なんの役に立つんだと思っていた。
「悠里さんは算数……えっと数学、得意?」
「特別に得意とか好きとかないかなー?そこそこの成績は取ってるけど」
それでも。当時のあたしには凄いことで。
彼女を尊敬するには充分だった。
「いいなー。頭良いって。悠里さんのこと、もっと教えてよ」
「うーん…胡桃ちゃんが小学校卒業したら考えてあげるわ」
「えー。まだ半年以上あるんだけど」
笑って返された。
やはり彼女はこの時点でもまだあたしとの距離を一線引いているようだった。
だから、あたしは。
そんな彼女に少々ムキになっていたのかも知れない。
「どうしたの?」
「卒業したら覚えててよ!あ、これからもあの公園には来るよね?」
笑顔で返された。
距離感が掴めない。
あの人の心の内なんて、あたしがズカズガと土足で入って行っていいものではないのは解ってる。
だけど、それからの勉強を教えて貰ってる間も頭はどこかお留守だった。
「聞いてないならやめるわよ?」
「あ、ごめんなさい」
「まあ、冗談だけどね。この洋服も借りちゃってるし」
「気にしないで。ママの服だしさ」
「気にするわよ。洋服洗って返すから」
「急がなくていいよ?」
「そんな訳に行かないでしょ」
彼女を帰したあと、どうだったかは記憶が曖昧だがやはりママには怒られたと思う。



「今日はいるかなー?」
学校が終わると、例の公園に寄るのがいつの間にか日課になっていた。
勿論、必ずいるなんてことはない。
いたら何気ない会話をして別れる。
そんな毎日だった。
「あら、こんにちは」
いた。すぐに声をかける。
「悠里さん、今日すっごいムカつくことあってさー」
「え、大丈夫?何があったの」
「あー…悠里さんに愚痴っても何もならないし」
「聞くだけ聞くわよ?人に話してスッキリするのもあるでしょ」
「そう、だけどさ。悠里さん、自分のこと話したがらないしー。あ、いや不満があるんじゃなくてね!」
そう。卒業したら教えるって言っているのに、あたしは段々とこの人のことが知りたくて仕方なかったのだ。
「そんなに知りたい?私のこと」
「そりゃ知りたいよ。知りたいけど、卒業するまで我慢する。約束だもん」
「うん、いい子ね。胡桃ちゃんは」
いい子なんだろうか。
座っていたブランコを思いっきり漕いだ。
風が少し冷たい。いつの間にか秋は通り過ぎようとしていた。
「悠里さん、進路どうするの?」
「ん?第一志望にはちゃんと受かるつもりよ?」
「へー。流石だね」
それ以上は聞かない。
あまりあれこれと言われても困るだろうし。
そろそろ帰らなくてはいけなかった。
「日が短くなってきたわね」
「そうだねー。それと、ゴメン悠里さん。今日はもう帰らないと…」
「謝ることないわよ?何、用事あるの?」
「うん…気は進まないんだけどね」
「そう。それじゃ私も帰ろうかな」
と、その日は別れたが、まともな会話が出来た最後の日がこの日になるなんて当時は全く知らなかった。
受験なんてなくなってしまえばいいのに。
殆ど来なくなった公園を思い浮かべながら考えてしまう。
それでも、あの人には受かってて欲しい。そんな思いもあってか、あたしは家で黙々と勉強をしていた。
ある日、息抜きに外に出た。密かに期待してたのかも知れない。
「いる訳、ないのに」
誰もいない公園を横目に、コンビニで買った肉まんを齧る。
味なんてしなかった。
それからもちょくちょく公園には顔を出していたが、あの人が来ることは3月までなかった。



「あ、胡桃ちゃん」
「悠里さん!全然来てくれないからどうしたのかと思った」
「…そうね、ごめんね。色々ゴタゴタしちゃってて」
「うん。どうだったの?いや、合格はしたんだろうけど」
「おかげさまで。あと卒業もしてきた」
「え!?ちょっと待って。あたし、何も用意出来てないよ?」
「いいわよ。胡桃ちゃんの卒業の時に貰うから」
でも、と渋るあたしだったが結局は卒業式の日を聞かれて、あたし達は帰路に着いた。
卒業式なんて立って座っての繰り返しで正直あの頃は面倒くさかった記憶がある。
ようやく終わった式をあたしはママに適当に言い訳をして公園へと向かう。
もう来てるかも知れない、そう思ったらいても立ってもいられない。
「悠里さーん」
やはり彼女は先に来ていた。
いつものベンチ、読んでいた本を閉じた彼女は顔を上げて微笑んだ。
「卒業おめでとう、どう?実感ある?」
「ない!あと約束覚えてるよね?」
「ええ。でもまずは胡桃ちゃんの卒業祝いあげるわね」
「あ、あたしもあげるよ!」
言ってから、何も持ってないことに気付く。
あわあわとしてるあたしをクスクスと笑いながら、彼女は卒業祝いをくれる。
でも。卒業祝いかと聞かれれば疑問に思うもので。
「改めておめでとう。もう私みたいなのに懐いちゃダメよ?」
「え、それってーッ!?」
一瞬のことだったし、解らなかった。
ただ目の前があの人一杯で、やけに口が熱かった。
何も言えないまま身体も動いてはくれなかった。
動く頃には、あの人は公園の入り口近くにいて。
「さよなら」
「待ってよ、なんでこんなことーーー」
彼女は振り返って何か言いたそうな顔をして、でも何も言わず行ってしまった。
それからは公園に寄ることもなくなった。
なんとなくだけど、あの人はもう来ない気がして。
中学に入り、忙しくなったと言えばそれらしい言い訳にもなる。自分に言い聞かせていた。
でもふと考えてる自分がいる。最後があんな別れ方だったのだ。嫌でも頭を過った。
中学生活は怒涛のように過ぎていった。
高校はあの人と同じ場所に行きたかったから、受験勉強は必死だった。
それでもあの人を片時も忘れていない自分の心には、認めようとしてもまだ認めたくなかった。
「なんか、アンタって高校入ったら途端に勉強しなさそう」
中学の友達に言われた言葉だ。
反論した覚えはある、が…あながち間違ってもいなかった。
合格発表の日は緊張した。したけれど、いざ蓋を開けてみれば、1発合格。
例の友達に驚かれた。自分のことのように喜んでくれたのも彼女なのだが。
今その子はどうしてるだろう。中学を卒業してから全く連絡を取ってはいない。



高校も気が付くと2年はあっという間に過ぎている。そんな3年の夏休み。
それまでの高校生活で1番印象に残っていることといえば、2年の修旅だろう。
中学の時は何気にそういう会話を避けてこれただけに、高校ではバッチリ餌食になった。
そう、恋バナってやつだ。
「さあ、吐くのだー」
「てか、恵飛須沢さんが謎。そういうの全く聞かないんだもん」
「恵飛須沢ちゃんは密かにいるタイプと見た!」
「あたしの話はいいからさー。皆の」
「「「ダメ」」」
溜め息が出る。これではどのみち話さなくてはいけない。それならさっさと話そう、そう思った。
「…逆に聞くけど、皆は好きな人は?」
「だからうちらの話はいいんだって!今はこっちが聞きたいんだから」
もう1回溜め息を吐きたくなる。もう覚悟を決めよう。
「…まあ、いる、よ。好きな人」
「え?」
「嘘だー」
「あ、リア充じゃないんでしょ?知ってる」
酷い言われようだ。この頃にはあたしのあの人への思いは募りに募っていたのは事実だ。
自分の気持ちを自覚したのは中学の時だったけど、あの時は勉強を理由に気持ちから逃げていた。
でもいつまでも逃げてるだけじゃダメなことぐらい解っていたし。
気持ちに向き合ってみたら簡単なことだった。
向こうがどう思っていようがどうでもいい。あたしがあの人を好きっていう気持ちがある、ならそれでいいんだ。
「で?もういいよね。話したし」
「納得出来んわ!相手は誰じゃ。イケメンなら爆ぜろ」
「いや…両思いじゃないし」
「でも恵飛須沢さんにそんな話あるとかショックー」
「って言われても」
「くそぅ…まだにしてもいずれ出来るタイプだったかー、あーあ」
「あのさぁ、なんなんだよ。お前ら」
「「「なんなんだよ、はこっちのセリフだよねー」」」
そう。こいつらはいいやつらなんだけど、彼氏というものが出来ない。
少なくともつるむようになってから、いた話は聞かない。
だから話したくなかったってのもあるにはある。
「悪いやつらじゃねーしそのうち出来るよなー」
蒸し暑い部屋で独り言を漏らす。
こんなに暑くなるなら図書館でも行けばよかったと思いながら、去年を思い出していた。
勉強の合間の休憩は、いつの間にか結構な時間が経っていた。
こんな日はもう、何をやっても手につかない。
あたしはさっさと勉強を終わらせる。今の成績だったら、充分射程圏内に入っている。
2学期にある高校最後の文化祭は割と楽しめそうだ。



高3の文化祭というのは、あっという間に過ぎていく気がする。
うちのクラスは無駄にテンションが高いやつらが多く、張り切って準備していた。
そんな中で出来たマジックハウスであたしは受付をしていた。
前日まで調整してたものだから全くもって眠い。
眠いなら寝てれば?とは冗談半分で言われたが、マジで眠くなってきた。
そして意識は段々なくなっていった。
……頭を撫でられてるような気がして、目が覚める。一瞬、あいつらがふざけてるのかと思ったけれど。
「…おはよう」
「え!?悠里さん!??」
夢でも見てるのかと思った。だってもう逢うことなんてないと思ってたから。
「久しぶりに母校の文化祭に来てみたら、知ってる顔があったから。大きくなったわね、胡桃ちゃん」
「あの!あたし、悠里さんが…あ、いや。なんでも」
「胡桃ちゃんのクラス、マジックハウス?」
「あ、うん。入ってくれるの?悠里さん」
「折角来たし。それと胡桃ちゃんはずっと受付してるの?まだ眠そうだけど」
「交代はありますけど。それにさっきので目、覚めたから。悠里さん?」
「さっき何か言いたそうだったでしょ?よかったら一緒に回りながら聞くけど」
なんて人だ。この人はいつもあたしの心を掻き混ぜる。
嬉しいのに、どこか不安で。
身体は熱くなってるのに、心は至って冷静で。
それが悔しかった。



「お待たせ、悠里さん」
自分でも驚くほどドキドキしている。
こんな感情になるのは多分彼女だけだ。
「それじゃ、行こっか。どこがオススメ?それとも先に話聞く?」
「先に色々回ってからじゃダメ?心の準備が、その」
「(…)そっか。うん、解った」
「ありがと、悠里さん。ところで、今は何してるの?」
「立派に社畜してるわ」
「えー、それって立派とか言う?」
「そうね」
と彼女は返しながら。とある教室の前で立ち止まる。
「あ」
「どうしたの?胡桃ちゃん」
「あ、えっと。大したことないんだけど…未だに悠里さんの方が背が高いなぁって。これでも伸びたのに」
「でも胡桃ちゃんだって綺麗になったと思うけど」
ちょっとだけ悔しい。こんなことなら助っ人じゃなくてどこか1つ部活に在籍してればよかった。
あと綺麗だとか聞こえた気がしたけど、あたしを呼ぶ声に思考が遮断される。
「あれ?恵飛須沢ちゃん。その人は?てか、ここ入るの?」
中から出て来たのは友達3人組の1人だった。何やら手には大量の景品が見える。
「この人はここのOG。今案内中だからお前の相手してる暇ないぞ」
「へーへー。ちなみにここのクラスの景品、恵飛須沢ちゃんの好きなぬいぐるみさん多いからねー」
「う、煩いな。もう!」
そんなことを言って彼女は去ってしまう。勿論、OGと紹介した人には挨拶をしてから。
会話を思い返して恥ずかしいやり取りをしてしまったと思っていると。
「ぬいぐるみ好きなの?」
「え、うん…」
「じゃ、ちょっと入ってみましょ。ぬいぐるみ、貰えるかもよ」
「いいって!別にぬいぐるみとか、い、いらないし」
「私が欲しいのよ。女の1人暮らしのお供」
言って中に入ってしまう。1人暮らしの部分に引っかかりながらも、あとを追うことにした。
「あ、あれ可愛い」
「あら、本当ね。狙ってみようかな」
「取れる自信あるの?悠里さん」
「取れなかったら、胡桃ちゃんが取ってくれるから平気よ」
なんて言うもんだから、あたしの心臓は早鐘を打つばかり。
顔にも出てるかも知れない。あたしが解りやすいと言われたのはいつだったっけ。
彼女が笑顔を向けてあたしの元へと帰って来る。手には袋。中身は何個かぬいぐるみが入っていた。
「大量だね、悠里さん」
「胡桃ちゃんの分もあるわよ?ハイ、これ」
渡されたのは先程見たぬいぐるみ。近くで見るとより一層可愛かった。
「可愛い…ありがと!すっげー嬉しい」
「いえいえ。そんなに喜ばれると全部あげたくなっちゃうわね」
「え!?いいの!!って違うでしょ、悠里さん」
一瞬、反応してしまったけれど。あたしはこれだけで充分だった。
「それじゃ、他の場所も見て回りましょうか?」
あたしも袋を貰ってぬいぐるみを中に入れる。それから改めて彼女とあちこち見て回る。
だけど、あたしは段々とこの人の隣を歩くのに苦しくなって来ていた。だから、言ってしまった。
「ねえ、悠里さん。薄々気付いてるんでしょ?あたしがしたいっていう話」
「それは…」
あたしは問答無用で腕を掴んで彼女を引っ張っていった。
使われていない教室なら奥に何個かあった筈だ。その1つに彼女と入る。
「あたし、悠里さんが好きだよ」
煩い。
「…そう、やっぱり」
「言っとくけど、本気だから」
本当に煩い。
「………」
黙り込んだ彼女との距離を縮める。
未だに煩いままの鼓動は無視したまま。
そのまま唇を奪ってやった。
「元はと言えば最初にしてきたの、悠里さんだからね?」
「そうね。あの時はどうかしてた」
「悠里さんは?あたしのことは結局どう思ってるの」
「否定したかったけど。ずっとあの頃から好きよ」
「へへっ、そっか」
嬉しくて抱きついた。心臓も喧しいくらい鳴り響いてる。
「連絡先教えておくわね。今度ゆっくり逢いましょ」
「う、うん!」
もうあたし今日死んでも構わない。
「にしても、胡桃ちゃん。今までお付き合いしたことって?」
「ないよ。ずっと悠里さんのことばっか考えてた」
「あら。純粋なところは変わってないのね」
「止めてよ、あたし今幸せなんだから。これで悠里さんとデート出来るんだし」
自分で言った言葉に少々照れる。早く2人で遊びに行きたかったのは本当だ。
「…胡桃」
「え?何。悠里さ、」
不意打ちにされたキスは2回目だ。
不意打ちでするの好きなのかなとなんとなく思っていた。
「2人きりの時は呼び捨てで構わないわよ。私もそうするから、いいよね?」
「いいよねってあたしが嫌だなんて言わないこと解るでしょ。悠里」
満足そうに笑う。その顔を見て、どうしようもなく好きだと思った。
空き教室の一角に座りながら、2人の時間を過ごす。これだけで幸せだ。
でも。今度逢おうとすれば話は別だ、どっちも忙しい身。
逢える日なんて限られてくる。だからなるべく連絡は取りたかった。
「胡桃は進路どうするの?」
「それ、昔あたしも悠里に聞いたよね」
「そうね。ごめんなさい、結局何も答えなくて」
「別にいいよ。それで、仕事ってキツイの?ブラック??」
「2年目だし、そこまで苦じゃないわ。それにこういうのは大変だって思ったら負けなのよ。好きな職種なら尚更」
「ふーん、そっか。あたし、どうしよっかなー」
「進学か就職かで悩んでる?」
悩んでる、のかも知れない。
勿論、素直に考えれば進学なんだけれど。
「…笑わないで聞いてくれる?」
「笑わないわよ。何?」
「あたしさ、将来の夢聞かれる度に可愛いお嫁さんって答えてたんだよ」
「可愛いお嫁さん」
「リピートしないで」
顔から火が出そうな程、赤くなってるだろう。
やがて悠里は笑顔を向けて言ってのける。
「私達が結婚すれば何も問題ないわね」
「けっ、え!?」
「ちょうど男除け用に指輪欲しかったし、胡桃が選んでくれたらなー」
なんて。左手の薬指を触りながら言ってくる。
本当にこの人はズルい。
こっちがまともに反撃出来ないと知ってる。
でも1度くらいはあたしだって。
「それってさ、悠里もあたしに指輪選んでくれるってことでいいんだよね」
「勿論。私の可愛いお嫁さんだもの」
「んなっ!」
やっぱりズルい。
反撃は愚か、カウンターを食らった。
そしてそのまま口が塞がる。
このまま文化祭なんて抜け出して、今すぐに指輪を買いに行きたいぐらいだった。



「私ね、こうなることなんてないと思ってた」
2人の予定がちょうど空いた日。
指輪のことも含め、デートに出掛けた。
ふと悠里が口にした。
立ち止まって悠里を見る。そんなのはあたしも同じなのに。
「こうしてるだけで幸せってなんかいいじゃん?」
「うん、ホントね。今日は楽しみましょ」
「それでどうする?先に指輪?それとも何か見たりする?」
「先に買っちゃいましょ、指輪。安物で申し訳ないけど」
「それを言うならあたしの方だし!一応バイトしてコツコツ貯めてたお金持ってきたけど」
「バイトしてたんだ」
「去年までね」
流石に受験の今年、やろうとは思わなかった。
悠里になんのバイトしてたのと聞かれたが、答えるのには何故か抵抗があった。
でもま、バイトのお陰で数字には少し強くなったのは事実だ。
「あ、あのお店よ」
前方に綺麗な店が見えた。ただ買い物に来ただけなのに緊張する。
「ま、待って」
店の中はあたしがいたら場違いなくらい綺麗だった。そんな雰囲気の中で。
「胡桃は割となんでも似合いそうだから困っちゃう」
「そんなことないよ」
悠里は早速選んでくれている。あたしも悠里の指輪を選ぼう。でもいざ選ぼうとしても、どれもみんなよくて。
そして一際輝いているのはブランド物だし。
難しい。
「ね、胡桃って指輪のサイズ解る?」
「え!?し、知らない」
「そっか、私と同じくらいかなー。向こうで測って貰えるみたい、ちょっといい」
「いい、けど。悠里はサイズ知ってるんだ」
「何かあった時の為にね。あ、もしかして嫉妬した?」
「なんでそうなるの」
と、まあ色々あったけれど、指輪は2人共無事買えた。
「折角胡桃が選んでくれたんだし、今すぐつけようかな」
「今?」
「ダメ?欲を言えば、つけて貰いたい」
「………つけてくれるんならつける」
「ありがと。大好き」
「うん」
喫茶店で指輪を互いにつけて、ぶらぶらと歩く。
ほぼ同時に、映画館に目が行った。
「何か観てく?」
「そうだね、観たいものがあれば観てもいいかなー」
ラインナップ的にはあたしは恋愛ものしか観たいものがなかった。
悠里はどうなんだろう。ふと隣を見た。
「私は胡桃の観たいものに合わせるわよ。でも」
「でも?」
「恋愛ものだと映画館で観るよりテレビの方がいいかな?」
「そっか…いや。いいよ、それじゃ」
「ごめんごめん、合わせるって言っておいてそれはないわよね。折角だし観ましょ」
なんて言って映画館にスタスタと歩いて行く。
あたしはそのあとをついて行った。
やがて映画が始まると、あたしは話に夢中になった。けど、どこか違和感を感じる。
ちらと横を見ると、悠里と目が合った。一瞬のことでどう反応すればいいか解らなかったけれど。
今度は手に違和感。握られてる。勿論悠里以外いないけれど。また横を見る。
今度ははっきりと目が合った。変な汗が出て来た、映画どころでもなくなってる。
それでも視線を元に戻して集中しようとする。
肩に重さが増した。悠里だろう。もう一々見ない。見たらあたしも悠里も危険な気がして。



「まさか映画館で恋愛もの観ると発情するとは思わないじゃん?」
「その言い方はあんまりじゃない、否定はしないけど」
年明け。あたしは悠里の住んでるアパートに遊びに来ていた。なんでも新作の恋愛映画をBDで観たいらしい。
「それでそろそろ観ないの?」
「胡桃がいいんなら観るわよ。覚悟は出来てる?」
「せめてさ、観終わってから発情してよ」
「そうしたら胡桃、今日帰れないわよ?家に」
「…またまたご冗談を」
「本当は今日ここに来てくれた時からずっと帰したくないって思ってた」
そんなこと、言わないで。
帰りたくなくなる。
「あたしだって出来るならずっとこうしていたいのに」
「胡桃…今日泊まってって」
「な、えっと。でも」
「私もずっとこうしていたいの」
「え、あたし声に出してた?」
「出てた」
泊まる気なんてないのに。
身体は言うことを聞かない。
あたしは悠里の布団の上に座っていた。いや、寝かされる。直感で思った。
「マ、お母さんに怒られたら悠里の所為だかんな」
「はーい」
そして口が塞がる。何度目だろう、もう忘れた。
布団に横にされる。いいよね?なんて優しく言うもんだから頷くことしか出来ない。
大好きだよ。
暗い中で握り合ったあたしの右手と悠里の左手が重なる。悠里の嵌めた指輪の感触が伝わって嬉しくなる。
悠里も同じ考えだといいなと思いながら。



「ただいまー。悠里ー」
「おかえりなさい、お疲れ様。今日はどうする?一応おかずはレンチンすればすぐ出せるけど」
「悠里のご飯食べたいー。今日は何?」
「ロールキャベツ」
あれから十年は経っただろうか。
この歳になると誕生日が来ても正直微妙な気分になる。時計は深夜を回ろうとしていた。
あたしは悠里と一緒に新しく借りたマンションで暮らしながら、仕事もなんとかやっている。悠里も順調そうだ。
「てか、今度また支店出すんでしょ?悠里の会社」
「あ、うん。その分、社内は異動と左遷やらでざわついてるけど。ハイ、どうぞ」
それは嫌だな、と口にしてから。
いただきますとあたしは食べ始める。やっぱり悠里のご飯は美味い。
「…なあ、悠里」
「何?」
「えっーと、さ。あたしと…」
「どうしたの?歯切れ悪いけど」
「う、ん。あたしと結婚して下さい!」
「え」
「え、じゃなくて!一応プロポーズ!これ」
「だってそんな今更。私達とっくに」
「あたしからのけじめっつーか。ちゃんと言っておきたかったから」
のんびりと旅行にも行ってみたいけど、流石に予定を合わすのは難しい。
「そっか。うん、喜んで!ありがとうね、胡桃」
いざ言うと恥ずかしい。照れ隠しで何かしようにも出来なくて。
逆に悠里からキスされる。
「あたし、食べてる途中なんだけど!?」
「大丈夫よ、これから胡桃のこと私が食べるから」
聞かなかったことにしよう、今日は久しぶりに悠里のご飯が食べられたし、色々したいこともある。
明日は珍しく2人共休日が重なったんだ、昼まで寝てたい。
なんて思っても、結局この日寝たのは明け方だった。


あとがき
なげーーーーーーよ。加筆修正のループしてたらいつの間にかw
無駄に妄想が止まらなかった所為です。
まあ、年の差書いてて楽しかったですよ。
これの若狭視点はかなりどうしようもなく暗くなるので書きません。構図と言う名の妄想はあるんですけどね。
[ 2016/05/28] がっこうぐらし!SS |