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急に

年の差りーくる書きたくなったのでねー。
まだ本編の方読んでない、って方がいたら先にそっちを。
とりあえず、本編のリンクも張っておきますね。
では続きからどうぞ。
【泣いてもいいんだから泣こうよ】

早く来すぎたかな。
かな、じゃなくて早く来ていることは時計を見れば解るのだけど。
時折吹く風が冷たい。時間はいつだって早い。
「やっぱり1秒でも早く逢いたいもんなぁ」
それだけなのだ。
悠里から時間出来るから逢わないか、とメッセ来た時は飛び上がる勢いだった。
いや、そのメッセを見たのが自分の部屋だったら飛び上がってたかも知れない。
待ち合わせ場所はあたし達が初めて逢ったあの公園にした。
もっとも、何年も来ていなかった公園は公園とは似ても似つかない姿になっていたけれど。
その時。あたしの携帯が震える。
感傷に浸りかけていたところで現実に引き戻される。多分、悠里からだ。
『あ、胡桃?ごめん。少し遅れるかも』
「オッケー、適当に待ってる。メッセでもよかったのに」
『いいの、胡桃の声だけでも早く聴きたかったのよ』
「そっか。あたしも悠里の声が聴けて嬉しい、かな」
なんて。顔が赤くなってるのは自分でも解る。
それでも口を突いて出たのはやっぱり悠里だから。
通話を終えると、より一層逢いたい気持ちが募って来た。



さて。この冷たい空気の中、どこで待ってようか。
悠里が待ち合わせ場所の旧公園にやって来たと同時に声をかけたい。
だけど、この通りが通学路なのは今も昔も変わらないまま。
どこかゆっくりと出来る場所なんて近くにはなくて。
結局あたしはずっとその場から離れなかった。
スマホのアプリを起動する。
けれど、暫くやったところで全滅してしまう。
あと少しで倒せただけに悔しい気持ちが拭えない。
アイテムを使えばコンテニュー出来る、けど。
「使わないの?アイテム」
「アイテム大事にしておきたいんだよ」
「そうなの?よく解らないけど」
「アイテム、別のアイテムと変えられたりするからなー……なあ、悠里。いつからいたの」
アプリをやめて声のする方へと顔を向ける。
そこには最愛の人がニコニコとした顔で立っていた。
「ついさっきよ?胡桃が何やら集中してスマホ弄ってたから横から覗いちゃった」
「いや、暇潰しにやってただけだし、来たんなら声かけてくれればいいのに」
「それじゃ面白くないじゃない?」
全くこれだから。
あたしは通学路を前後左右見渡した。人影がない。通学路としてはどうなのか気にはなったが今は丁度いい。
「悠里、久しぶり!逢いたかった」
「うん。私も」
重ねた唇はずっと離したくない。



行きたい場所はいくらでもある。
話したいことだって山ほどある。
こんな時にこそ、時間が止まればいいなんて都合がいいことしか浮かばない。
「悠里はどこか行きたいとこある?」
「胡桃が隣にいるだけで満足だけど…じゃ、あそこ行きたい」
「あそこ?」
「胡桃はつまんないだろうけど」
「例えそうだとしても悠里と一緒に行くならどこでも楽しいよ」
「そう、ありがと。それじゃ行きましょっか?胡桃の家」
「は?今、なんて」
「貴女の家で遊ぼうと思って」
え。えー。
部屋片付けてないだとか悠里に見せられないあれこれとか抜きにしても。
「今、マ…お母さんいるんだけども」
「気にしないわよ?」
「そこは気にして。大体折角なんだからどこか行かないの?」
「のんびりしたい気分ってあるじゃない?今は胡桃と一緒にそんな気分」
なんか、あまり納得出来ない。嬉しいけど。
「じゃ、今度出かけようね。てか、悠里疲れてたりする?1人暮らしなんだよね?」
「疲れてる訳じゃないわよ。1人暮らしも慣れたし」
「ねえ、なんで家出たの?」
「色々あってね。胡桃の家着いたら話す。久しぶりに胡桃のお母さんにも挨拶しなきゃだし」
「……あれ?悠里ってあたしの親とは話してない筈だよね?」
「そう思うでしょ?実はあるのよ。ホラ、お母さんの洋服返す時に1回行ったから」
初耳だった。
そっか。覚えてないだけだ。ママも何も言わないから今まで忘れてた。
「ところで、さ。家帰ったらちょっと部屋とか片付けたいんだけど」
「手伝おうか?」
「ダメ」
手伝いたいオーラが出てる悠里を横目にあたし達は歩く。
手伝ってくれても構わないかも、なんて思ったけれど。
絶対に途中から片付けとかしないだろうことは想像出来たし。
そんな中で悠里は。
「あの公園も何年くらいからあんなだったんだっけ?」
「さあ?あたしの知る限りじゃ中学の頃はまだ公園の原型あった気がする」
やがて恵飛須沢家が見えて来る。
いつも以上に緊張して来た。



「胡桃」
「ん?何ー」
玄関のドアを開けようとした時に声をかけられる。
そのまま悠里の方へと首を回すと、微笑んだ彼女の顔が視界に入り、キスが降って来る。
「もうちょっと我慢出来なかったの?」
「出来なかった」
なんて、可愛い顔で言ってくるもんだからそれ以上何も言えない。
下手したらもう1回したくなる。
部屋に入ろう。その方がなんだかんだ身の為だ。
玄関に入ると、声が聴こえたと思ったら足音も聴こえる。ママか。
「早かったのね、胡桃。今日は張り切ってたからデートかと…あら?若狭さんだったかしら」
「あ、お久しぶりです」
「なあに?胡桃。若狭さんとデートだったの」
「ちょ、何言ってんの!」
「違うの?」
「も、もういいから部屋入って来ないでね!」
そう言って悠里の腕を掴んで部屋に入った。もう片付けとかどうでもいい。
「胡桃のところは仲がよくて羨ましいわ」
「仲がいいのかな、あれ」
「いいわよ、私のところなんて全くだもの。いや、家族なんてもういないわ」
「え、何かあったの」
それからあたしの肩に頭を預けた悠里は少しづつ話していく。
それは聞いてるこっちが締め付けられそうな内容だった。
だけどあたしには何も出来なくてそれが悔しくて。
気が付いたら泣いていた。
「く、胡桃!?」
「ごめん。なんか勝手に出て来てた」
「貴女の所為じゃないわよ。こんな話した私の責任もあるんだから」
「悠里は何も悪くないじゃん。悪いのは、……なんでもない」
「胡桃…ありがとう」
どうしようもなくて抱きしめる。
悠里と目が合った。涙はまだ止まってくれそうにない。
悠里が耳元で、していいかとぽつりと呟く。あたしも黙って頷く。
離したくない気持ちがどんどん勝っていく。
キスまでもう1㎝もない、そんな時に邪魔は入る。



『胡桃?貴女、若狭さんにお茶の1つも淹れてないでしょう??あとお茶菓子』
なんかそんな気はしてた。あのまま、ママが何も言ってこない訳はないなとは思ってたから。
ドア越しに聴こえるママの声に気力がごっそり持って行かれたような感覚を味わいながら、悠里を見た。
ちょうど気まずい空気が流れる中、悠里とバッチリ目が合ってしまう。
「呼んでるわよ」
「え、あ、うん」
互いに少々裏声になりながら、あたしは部屋を出る。チラッと振り返る。
もうこちらは見ていない悠里だけど、出来るなら今すぐ抱きしめてキスしたかった。
「胡桃、若狭さんのこと、1人の女性として好きでしょ」
「へ?え、なんでよ??」
持ってたお茶菓子を落としそうになりながらもなんとか答える。もう変な汗が出る。
「じゃ、もし胡桃の目の前でママが若狭さんに抱きしめられたらどう?」
「ありえない」
「例え話でしょ。でも即答するってことは若狭さん1人占めしたいのねー…ママ寂しい」
「なん、で。必死に隠してたのにバレんの」
そう言ったあたしにママは。
「たった1人の娘のこと解らなくてどうするの?」
仕舞い込んだ涙が出そうになった。



「ごめん、ママ。あたし…」
「ホラ、泣かないの。若狭さんのこと幸せに出来ないぞ」
「でも前に言ってたじゃん。ママ、あたしの子供見たいって」
「言ったかしら?それより、若狭さんにお茶とお茶菓子、早く持って行ってあげないとね!もう邪魔するつもりはないから安心して」
半ば強引にキッチンから追い出される。
結局、この日はママにありがとうすら言えなかった。
部屋に戻ると悠里が待っていた。
見ていたのはあたしの机にあった家族で撮った写真みたいだった。
なんとも言えない気分になりながら、お茶を差し出す。
「もう来ないらしいよ。お母さん」
「そ、そうなの。何か話した?」
「まあ、色々」
「…」
「……どうする?どうする、とかないけど、さ」
お茶を置いた。悠里を見ると何か言いたそうだ。
「こっち来て、胡桃。キスしたい」
「ん。了解」
実際、キス以上のこともあれこれされた。
ただ程よいところで止められたのは、家にママがいたからか。
「そろそろ帰らなくちゃ」
「….そっか。早いな、今度いつ逢えるか解らない?」
「逢えそうになったら連絡する。それじゃダメ?」
「全然いいよ。今日はありがと」
別れを惜しんだあと、玄関先でママが顔を出した。
「若狭さん、これ持ってって」
「え、でも」
「いいのよ。美味しいから、食べて」
「えー、てかさっきそれ出さなかったじゃん」
「胡桃は気が付いたら食べてるでしょ」
非常に憤慨であるが、まあ概ね事実なので黙っておく。
「あの、ありがとうございます。戴いていきますね」
「また遊びにいらっしゃい。その時までに胡桃の部屋は片付けさせておくから」
「ちょっと!!!」
「ふふっ…それじゃ、またね」
「うん、また」
玄関を出て見送る。もう外は暗くなり始めてる。
空を見ていると月が出ていた。
「胡桃?」
「いや、月がきれーだなーっ、て」
「…月、あ。ほんとだ。綺麗ね」
無意識に発した言葉は、悠里の笑顔を引き出した。
あたしは誰かに見られるのも承知で悠里の唇に自分のそれと重ねた。
「えへへ。気を付けて帰ってな」
最後に見た悠里の顔は赤く染まってただろう。


あとがき
年の差りーくる番外編。
忘れた頃にまた番外編とか書くかも知れない。
あくまでかも、ですが。年の差りーくる本編の指輪デート~年明けお泊まりーくるの間の出来事かなあ?
深く考えずに書き始めたから行方不明。
[ 2016/08/27] がっこうぐらし!SS |