FC2ブログ
2018 09123456789101112131415161718192021222324252627282930312018 11





ぴくしぶ





完成したじゃー

続きからくるみき。
年の差でござんす。そういうのに抵抗ある人ブラウザ閉じなされ。
5月から書き始めてたのか…うむ。
最後ちょっと駆け足になったのは反省してる。
【君といつまでもこうしていたいなんて】

今日は日曜でシフトも入ってなかった。
どこか行ったことないところでお昼でも食べようと思ったけどあたしのことだ、迷った挙句誰かに助けを求めるのが見えてる。それに暑い日にわざわざそんなことするなら家に帰ってみようと思い立つ。
現在暮らしてるアパートから家まで遠くはない。気が向いたら帰ることにしている。いるのだが。
「流石に何も言わないで帰るのはヤバイし」
最寄駅に着いてからそんなことを呟く。誰もいなかったら地元にあるチェーン店で済まそう。
〔もしもし、胡桃?何あんた、これから来る気?〕
何も言わずに言ってくる。こういうところはやはり親なんだなぁと感心する。
「来ようと思ってたけど、まずいんならやめるよ」
〔そんなことはないけど…ちょっとお客様が来てて〕
「ダメじゃん、それ」
〔貴女も知ってる人よ。え?胡桃、お客様が是非会いたいって〕
「会いたいって…あたしただお昼食べに戻るだけなのに」
家に寄っている時間なんてそんなにある訳ない。大体、客とやらが検討もつかない。
あたしが知ってる?いや、あの様子だとママ…母さんも知ってる。誰だよ。
まあいいや。家に向かって歩き出す。
電車の中でも思ったけれど、そうだ。今は夏休みだっけ。
あちらこちらで小さい子がワーワー言いながらどこかに行くのを目で追いながら、実家を目指す。
あっつい。
言いたくないけどあっつい。
前からJKが見えた。
なんだろう。一目見た瞬間にJKの後ろに翼が生えてるのかと思った。そんな筈ないからあいつはキューピッドか何かだと思うことにした、けどよく思えばキューピッドはショタだった。じゃ、あいつはどうしようもないあたしに舞い降りた天使だ。
暑さでどうにかなっている頭をシャキッとさせようとJKから目を逸らす。多分暑さだ。そう言い聞かせた。
その時だ。
「お姉ちゃん何考えてるの?」
「……?」
「その顔。忘れてる!」
忘れてるとは。
あたしはJKの知り合いなんていないぞ。
「…え、えーと、どこかで?」
「とりあえず家帰ろうよ」
「ちょ、ちょっと」
まだ何も解らない。
でもこのJKがウチに来た客なのだろう。それだけしか解らないだけだ。



「お姉ちゃんってば、なんにも覚えてないなんて薄情だなぁ」
「記憶にないもんは仕方ないだろ。それよりそのお姉ちゃんってのやめてくれ」
「って言ってもずっとこの呼び方だったし。今更変えるってのも…どうしてもダメ?」
「解ったよ、とりあえずあんたが何モンか解るまでな」
人をまた得体の知れない目で見るー。などとぶつぶつ言ったJKは少し寂しそうな顔をした。
「アレだよね、お姉ちゃんにとって私はその程度の人間だってことだもんね」
「思い出してないだけだろ。家に帰ったら名前教えて貰うぞ」
「……うん!勿論」
「途端に元気になりやがって」
「えへへ。そう?あ、お家見えてきた」
彼女の言う通り、実家が視認出来る距離まで歩いていた。
ここのところ家に帰ってなんていない。元々休みなんて少しでも貰えたらラッキーくらいなものだ。期待はしていない。
「うーん…」
「どうしたの?お姉ちゃん」
「いや、別に。あんたのこと全く思い出せねーなって」
「またあ?私は片時も忘れたことなかったよ?」
「JKには解らんだろうが、社会人になると昔のことなんていちいち覚えてらんねーの」
そう言って玄関をくぐる。ガチャっと音がした。
「鍵は閉まってるよ」
「うん、知ってる」
「そうかな?あとお母様が出掛ける時に素麺探してくれてたから、今頃出来てるかも」
「素麺いいね、夏って感じして」
改めて鍵を開けて中に入る。ただいまと声をかけるとキッチンからマ…母さんが顔を出す。
「帰るならもうちょっと早めに連絡しなさいね。ただでさえいつもふらっと帰って来るのに」
「へーい、努力するよ」
「お姉ちゃん、忙しいの?仕事」
こいつの存在忘れてた。
リビングに行くと、既に素麺は出来ていた。伸びない内に喉に通しながら訊ねる。
「それでお前は?あ、母さん。素麺さんきゅ」
「胡桃がママって言ってくれない」
「あのね、あたしいくつだと思ってんの」
「ママ呼び可愛いよ?」
目の前に座ったJKがニコニコとしながら言う。
溜め息を吐きたくなるけど、我慢してまた訊く。
「で、あんたとあたし、何処で何時会ってる」
「もう、お姉ちゃん結論出し過ぎ!うーん…初めて会ったのは私の家の庭だったかな」
「…庭?」
「うん。13年くらい前」
「覚えてるわけねーだろ」
と言うかだ。こいつはなんでいきなりあたしの家に来たんだ。それに肝心の名前。
「ホラ胡桃。美紀ちゃん。覚えてないわね、貴女」
「え?美紀ちゃん??」
「お姉ちゃんはみーちゃんって呼んでくれてたよ」
美紀ちゃん、みーちゃん。何か記憶があの頃に戻りそうな気がした。



後ろから気配がした。
嫌なタイプの、正直言って誰でも解る。変質者ってヤツだ。
後ろを振り返っても誰もいない。お約束だ。どうしたものか、今家には誰もいないのに。
急に怖くなった。こうなったら一か八か。足は早い方だ、近くの家に事情を話して助けを呼んで貰おう。
そこからは早かった。全力ダッシュでどこか開いてる家に飛び込む。飛び込んだと思った。
コケた、しかも盛大に。
それをそこのお宅の奥さんとお子さんに見られた。バッチリと。
恥ずかしくて、でもどんどん迫って来てるであろう変質者が怖くて泣いた。
「だ、大丈夫??どうしたの?」
そこのお母さんに事情を話すまでもなく涙が溢れて止まらない。
あたしを落ち着かせる為に、一旦家に入れてくれた。じっと奥さんにへばりついていたお子さんはあたしを見て心配そうな顔をしたけれど何も声はかけてはくれなかった。まあ、あたしが凄い顔で泣いてたってこともあるが。
「ごめんなさい。いきなり入って来て…でも後ろから変な奴に追われてる気がして」
「そう。怖かったわよね。暫くここにいなさい、その変な奴のことについても聞きたいしね」
優しい奥さんに安心した。こちらを伺っていたお子さんにも頭を撫でるくらいの余裕は出来た。
「お姉ちゃん、痛いの?」
「痛くはない、あ…さっきコケたところは痛いかなー」
撫でられた。突然のことでビックリしたけど、ひょっこりとお母さんが顔を出す。
「みーちゃんが家族以外の人と普通に喋ってる」
「この子、人見知りなの??」
「そうなのよ。あ、それで住所と名前、教えてくれる?ご両親の名前も」
「恵飛須沢胡桃。住所は」
「恵飛須沢って、あの恵飛須沢さん!?」
「え?」
この人が言うにはあたしのママと奥さんは顔見知りらしい。時々会って話すらしいのだ。
それはあたしもビックリなのだが、ぽつりと。
「娘がいるって前に言ってたけどこんな形で会うなんて」
それはこちらも同じようなもので。
とそこに、みーちゃんと呼ばれた子は何かをあたしに差し出して来た。
「お姉ちゃん元気なさそうだからあげる」
ただの棒つきキャンディだ。
だけどこの時凄い嬉しかった。
「あ、ありがとう。えと…みーちゃん?」
「うん。みーちゃん」
「美紀って言うの。また仲良くしてくれるかな?」
「それは…うん」
「ありがとう。胡桃ちゃんのお母さんに電話しておくからね」
「ありがとうござ…あ!でも今仕事」
「大丈夫。前に話した時に勤め先話してくれたことあるから」
なんの話をしたんだろう?ぼやっとそんなことを思った。



「お前、あの時の子供か!」
「胡桃、行儀悪いわよ」
「あ、もう食べたから大目に見てよ。あと洗い物やるから」
そんな中、目の前のJKを見る。
「思い出すのおそーい」
「だって13年だっけ?忘れるわ。母さんは相変わらず付き合いとかあるの?」
「たまにね。昔ほどじゃなくなっちゃったけど」
「へー」
キッチンに立って洗い物を始める。何かあたしがいた頃より綺麗になっている。
「ああ、そうそう。胡桃が気に入ってたアレ、新しくしちゃったわよ」
「食器乾燥機?確かに前見た時のとは違うけど…使い方はほとんど同じでしょ」
母さんはそう、とだけ言って奥に引っ込んで行った。客がいるのにこの扱いはどうか。
「お姉ちゃん、何か手伝おっか??」
「いいよ。ゆっくりしてなよ、一応客なんだから。てか、おま…美紀はなんで今日来たの」
「え!?あ、あーその。お母さんからお土産を持って行くように頼まれまして」
「…いきなり敬語になるなよ。何?」
「べ、別に。なんでもないです」
こっちが調子狂うんだよ。
洗い物が終わってまた美紀の目の前に座る。目を逸らされた気がした。
「露骨に逸らされると傷つくぞ」
「そんなつもりじゃない、よ」
「そ。あたし自分の部屋に一旦戻るけど、美紀はここにいろよ?」
「え?なんで」
なんでも何もない。
いくらあたしが帰ってない時に母さんが掃除してるとはいえ見られてはいけない物が出てる時がある。
掃除するなとは言わない。出した物は元あった場所に戻して欲しいだけだ。
「ところで」
「え、何?」
「待ってろって言ったんだけど」
「どうしても?」
どうしても。そう言ってあたしは美紀を離そうとする。その際に目が合って、成る程と1人納得する。
「解る解らない以前にさ、こんなに綺麗になっちゃ小さい頃の記憶あってもビックリはするよな」
「綺麗って…そんなのおね、胡桃さんだって同じですよ」
「ホントどーした?さっきからタメだったり敬語になったり。あとあたしは綺麗なんかじゃねーから。胡桃さんも慣れねーし」
「ダメ出しばっか」
「まあまあ。あ、部屋に着いちまった。どうしても入りたいなら10分、いや5分でいいから時間くれ」
「エロいBL本でも出てるの?」
そんなんじゃねーよ。
部屋に入る際に言ったけど、どこまで理解しているのかさっぱりだ。



「あ"っっっっづ」
なんだこの部屋、今何度だ。
確かめるまでもない、こんなところ5分もいられない。すぐにあたしは逃げるようにして部屋から出る。
「あれ?随分と早いけど何かあった、」
「うあー、美紀冷てー」
視界に入ったJKに抱きつく様に引っつく。抱きついてる内にあたしと彼女の体温が同じになった。
「ちょ、胡桃さんってば」
「あ、わりーわりー。部屋がすげー温度で。絶対30度超えてるぞ、アレ」
そう言ってわしゃわしゃと美紀の頭を撫でる。
細い髪質は撫でると気持ちいい。
段々と髪をじっと弄る作業に移っていた。
「ちょっと…下に行きましょうよ。ここもまた暑いんですって」
「んー。それにしてもサラッサラなのなー。羨ましいわ。シャンプー何使ってんの?さっき凄いいい匂いしたけど」
「お、教えない」
「え?教えてよ」
「……今度休みいつ取れるか分からないんですよね?」
「まあな。取れてもここに帰って来るかも分からん」
「また会ってくれるなら教えてもいい、かな」
そんな美紀の提案にあたしは。
「え、やだ」
反射的に答えてた。
違う。会ってもいい、けど。その前にやることがある。
「ご、ごめんなさい、調子乗った」
あいつはあいつで、1人結論を出してるし。
「あのなぁ。連絡先知らないでどうやって待ち合わせとかすんだよ」
「え」
「ホラ、あたしの教えるから。あーでも、返信はすぐは出来ねーけど」
「いいの?」
「夏休み中は期待出来ないけどそれでいいんなら」
「いいよ!あれ?胡桃さんって何やってるの?」
「今かよ。あーやっぱり1階は涼しい」
1階に下りてきたあたしは、クーラーの前でそんなことを言いながら、スマホ片手に美紀の様子を見る。
「連絡先ってSNSでいい?あ、それだと仕事の連絡とごっちゃになったりするかな」
「そんなことないけど。基本大事な連絡はメールだし。職場の先輩とかはくっだらないスタンプ送られたりするけど」
「そ、そっか。ねえ、胡桃さんの仕事だけど」
「ジムでインストラクターしてるわよね、胡桃は」
突然の母さんの声に反応が少し遅れる。奥に引っ込んでたと思ってたのにいつの間にかニコニコとあたし達を見ていた。
「いや、そうだけどさ。いつからそこにいたの」
「少し前よ。美紀ちゃん。これ、お母さんに渡して」
「え、でもいいんですか?」
「いいのいいの。今日のお礼だから」
「ありがとうございます。あの、胡桃さん。インストラクターって」
「ん?転職考えてるけど」
その言葉を聞いた時の美紀の顔は面白かった。



「インストラクター、続けないんですか」
母さんに言われなくても美紀を送るつもりだったあたしは只今絶賛送迎中。
「続けるもんでもないからなー。2、30代でどんどん辞めてくんだよ、インストラクターってのは。寿退社とかだったらマジで私怨たっぷり受けるから」
「はあ、そうなんですか」
「興味なさそうだな」
「あまりそういうのはよく分かんなくて」
「ふぅん。誰かと付き合ったことねーの?」
「あまりそういうのはよく分かんなくて」
「さっき聞いたよwモテそうなもんだけどな、美紀」
言ったら顔が赤くなった気がしたが、指摘したら怒ると思って何も言わずにいた。
そんな時だ。
美紀の家が見えてきたのはいい。けど何か変だ。
美紀の母さんが知らん夫婦に絡まれてる。いや絡まれてるように見えるだけか。何か話してるように見えるけど聞こえない。あたしが何か言う前に美紀が小さく口を開く。
「お姉ちゃん、ごめん。少し付き合って」
少し震えている。あたしの指を掴んできたのも弱々しくまた震えている。あたしはそれらを見ないようにした。
「美紀のお母さんには悪いけど少しどこかで時間潰そうか」
美紀の返答も聞かないで手を取って来た道を歩き出す。確か少し外れた道を行けば図書館があった筈だ。あそこだったら涼しいし、少しの間避難してもいいだろう。
その間、あたしは何も言わなかったし美紀も特に言わなかった。けど、進んでいる場所が解って来たのか恐る恐ると口を挟む。
「お姉ちゃん、図書館に行こうとしてる?」
「ダメか?」
「うーん、言いにくいんだけど、あそこもう閉館してて」
「んあ?なんだって??」
「数年前かな?閉館したの。なんか折角行こうとしてたのにごめんね」
「それはいいけど。どうする?駅前のカフェでも行くか?まだ帰りたくないだろ?」
「…うん、少しね。お姉ちゃん、何も聞かないんだね」
「言いたいなら言えばいいよ、あたしからは聞かない」
「……お姉ちゃんには言っておきたいんだけどここではちょっと」
「そっか」
とは言うものの、日曜だし加えて夏休み。
どこも混んでいるのは目に見えて解っていた。
かと言ってじっくり2人だけで話せる場所なんて。
「やっぱりお姉ちゃんは優しいよね。そんなとこ好きだよ」
「な、んだよ。急に…てか、どうする?どこで時間潰す?」
「私の告白は無視ー?」
「あれ告ったの?ああそうだ。勢いで手繋いだままだったわ、わりーな」
「いいよ、このままで。それと待つかもだけど、駅の近くにカラオケあるからそこでいいよ」
「カラオケなんて数年行ってないなー」
「それじゃ決定だね」
気の所為だと思いたいけど、その笑顔は無理に作られたものだとすぐに解ってしまう。
話を聞くことしか出来ない自分がもどかしかった。



「それにしても暑いのに、よくカラオケなんて来るもんだな」
受付を済ませて、待っている間そうぼやく。
「ストレス発散とか色々あるんじゃないかな?あとは課題から目を背けたいとか」
「それは1番ダメなやつ」
「まあ、ね。あ、もうそろそろ呼ばれそう」
「なあ。ホントに2時間でよかったの?」
うん。美紀は続けた。
「あまり長くなるような話じゃないよ。終わったら少しお姉ちゃんの歌聞きたいし」
「いやいや、美紀が歌えよ」
と、そこで名前を呼ばれる。
通された部屋はどう考えても2人で使うには少し広すぎる部屋だった。
「いいのかな、こんな部屋。ここしか空いてないって言ってたけど」
「いいんじゃね。他のところだって客でいっぱいいっぱいなんだしさ」
そうしてモニターの音量を0にする。
暫く歌わないから別にいいだろう。
「あ、ありがとう、お姉ちゃん」
「いえいえ。何か飲み物頼もうか。何する?」
「で、でも」
「いいから。お、これオススメだって」
「そういうのって逆に頼みたくなくなるなぁ」
「ははは、中々捻くれてらっしゃる」



美紀が話し始めるまで極力待つことにした。
自分のペースで話せばいいとは言った。
だから口が開くまで何も言わない。
「ねえ、胡桃さん。さっきのどう思った?」
「さっきのって美紀の家のアレ?」
「うん」
「どうって言われても…正直に言ってもいいなら言うけど、いい?」
「いいよ」
「あの夫婦ってもしかしてなんだけどさ、美紀の…」
そこで言葉が出て来なかった。言葉にするのが嫌だったのかも知れない。
そんなあたしを見てか、美紀は言葉をかける。
「胡桃さんのそういう気遣いが出来るところ、私好きだなー」
「さっきも聞いた気がする」
「えへへ。胡桃さんが思ってる通りだよ。あの人達は多分、私の本当の両親」
「え、でもなんで」
「私も詳しいことはまだわかんないけど。私は今の両親の養子なんだ。今まで私を育ててくれてたってちょっと前に聞いた」
「ちょっと前?」
「だって可笑しいじゃん、どう考えても。お母さんもお父さんも黒髪なのに私だけさ…」
「そっか。で、聞いたんだ?」
「私が高校卒業したら全部言うつもりだったみたいだけど、そんなの待ってられないよ」
あたしは静かに美紀の隣に座る。目が合っても曖昧に笑ってたかも知れないが。
「色々辛かったよな。ごめん、そんな時側にいてられなくて」
解ってる。ずっと側にいられないってことくらい。でもそんな事情抱えてて苦しんでるのに何も出来なかった自分がどうしても許せない。
「胡桃さんは何も悪くないよ。それに家族会議した時、私以上に号泣したのお母さんとお父さんだから」
「私以上に」
「そこ拾わないでよ」
「でもよかった。仲良くやれてるんなら。ところで美紀は本当の両親には会いたかったの?」
「え、私の両親は今いるお母さんとお父さんだけなんで。会うなんて選択肢なかった。だからさっきちょっと動揺しちゃって、胡桃さん巻き込んじゃった。あの…ごめんなさい」
「謝んなくていいよ。あたしだって美紀の親なんてあの2人しか考えらんないし」
「よく言うよね、忘れてた癖に」
「それ言われると何も言えないなー」
「でも胡桃さんって中学入って暫くは私のところに頭撫でに来てくれたよね?それも抜けてるんだ」
「申し訳ないのう。最近ボケが始まってて」
「ふぅん。まあいいけど…あの、もう1つ話があるんだけどね」
「お、いいよ。何?」
「先に謝っておくね。聞き終わってどう思われるかなんて予想つくから」
「えー、あたし相当なことじゃない限り動じないよ?」
「胡桃さんのことが好きだって言っても?」
「うん、あたしも好きだし」
「そういう好きじゃなくて」
「解ってる。恋愛だの交際だの恋人だののやつだろ」
「解ってるならなんで」
「今日さ、ワンピース着た天使に一目惚れしたんだ。自分でも信じたくなかった、けど声かけられて心臓止まるかと思った。いや、一瞬止まってた」
「え、誰?」
「誰って言われても…お前、今自分の格好見れば?」
そこで美紀は自身の姿を見る。見たところであたしを見る。なんかその姿が可愛い。
そんなこと言ったらどんな反応が返って来るだろう。
「あ、の。私が胡桃さんを迎えに来た時ですか」
「そうだね。えー、とその、好きなんだけど。……立場上のこともあってさ。付き合うとかまだ少し…その待って欲しいんだけど、美紀って今いくつ?」
「17歳。立場上って」
「JKに手出したら今怖いからなぁ。あと3年だけ時間頂戴。こっちも転職考えてる身だしさ」
「あ…」
「悪いね。ずっと待って貰ってたようなのにまた待て、とか。そもそも信じろってのもあれな告白なのに。いや、あれ告白か?」
「もう慣れましたよ。あとそんなこと言うのはナシで。天使とかも」
出て来そうになった言葉を飲み込む。天使についても何か言おうとしたけど飲み込んで置いた。
「あのさ、一緒に写真撮ってくれる?」
「いいですけど、この為にこちらに移動したんですか?」
「違うよ。いや、違くないかも。まあいいじゃん」
「こっちの気も知らないで」
あたしはスマホを向ける。カメラに写った美紀を見て、一瞬でもどうかなった自分が悪い。
「なあ、美紀。ちょっと顔こっち見てくれない?」
「え?どうかしましt」
シャッターチャンスは逃さなかった。
「これで3年我慢して、ね?勿論何かあったら連絡くれればいいから」
「ズルいなぁ。今ので我慢出来る訳ないじゃん」
そう一言呟いて美紀はあたしに抱きつく。その姿を永遠に見ていたかった。
「あ、なあ美紀。あんまりスカートとか履かないでくれないかな」
「え?」
「その。ただのワガママなんだけど、美紀にスカートは似合いすぎてて。変な奴に見られたくないって言うかですね」
「見せたいのは胡桃さんだけだよ?」
「う、うん」
「でも胡桃さんのお願いなら利かないとね!制服以外だったらなるべく着ないようにするよ」
「さんきゅ。それとさ、美紀っていつ頃から自分の気持ち分かり始めたの?」
抱きついてた美紀が身体を離した。少し残念と思ってしまうのはやっぱりあたしが変態だからなんだろうか。
「うーん……中学、の時かなぁ?どうして?」
「ん?このこと誰が知ってるのかなってふと思って」
「家族会議のあとに両親に話して、高校の親友には絶交覚悟で打ち明けたことある」
「そいつとはその後、」
「親友続けてるよ。前以上にお節介焼くようになったけど」
スマホに写ってる写真を見せられた。正直、肩に頭を乗せたまま話をしてる美紀に気を取られてそれどころじゃない。
「よかった」
「よかった?何が??」
「辛かった時に独りじゃなかったから。また独りにさせるじゃん、ていうツッコミはいらないけど」
そんな言葉に美紀は目をぱちくりとさせて。
「大丈夫だよ。3年でも5年でも待ってるから。胡桃さんもしっかりしなよ!」
インストラクターをやってる所為だろうか。
人の顔色には敏感になっている。もしトレーニング中に何かあったらこちらの責任もあるからだ。
ま、それは今は置いておいて。美紀の言葉には全く大丈夫な気がしない。無理してる、すぐに解る。
「さっきの写真、そっちにも送っておくから…会いたくなったら言ってね?」
「……言ったってすぐに会えないんでしょ」
「そ、それは」
「ごめん。こんなの八つ当たりだって解ってるんだけどね」
「…」
何も言えなかった。喧騒に満ちた方がいいのか、それとも妙な静寂を望んでいるのか、悩んだ時。
ーーープルルルル
「2時間経ってたんだね」
「早いもんだよな」
あたしは電話に応答して、帰ろうかとなる。
「結局胡桃さんの歌聴けなかったー」
「いいもんじゃないよ。逆に美紀の歌声が聴きたいってば」
「もう!私は聴き専なの」
「あたしもなんだけどなー」
何気ないやり取りをしてても、美紀のことを思う。
すぐに会えない。
八つ当たりだって解ってる。
頭の中で反芻する。耳に痛い。
ふと袖を引っ張られて我に帰る。
「会計、半分出すよ」
「ん、ああ。いいよ、奢る」
「でも」
「……そういうと思ってこれ預かってて。あたしの腕時計」
「え、どうして」
「3年経ったら返してくれればいいから」
「腕時計…それじゃ私のも持ってて!」



[お腹空いたー]
[我慢しなさい]
[だってお昼休みじゃないとすぐに返信来ないから]
[だから我慢しなさい]
あれから2年は過ぎただろうか。
季節の移り変わりなんて早いものだ。
「まだ合格祝いとか入学式、祝えなかったの気にしてるの?」
「いや、だって」
「仕方ないじゃん、仕事だったんだし。連絡くれたし気にしてないって言ったじゃん。それよりあと1年だからね」
「解ってる」
ちょっと前に会った時に交わした言葉だ。お互いの腕には交換しあった腕時計をつけていた。
愛しくて抱きしめたくなる。その思いを頭に向ける。
「また頭撫でる」
「なんだよ、好きだろー。頭撫でられるの」
「う…好きだけど」
これ以上は限界だった。
「ん?」
また来てる。もうすぐ昼休みが終わるのに。
[こんにちはー!今日、お姉ちゃんさんの勤め先に行きますねー]
圭か。既読つけちまったな…まあいいか。
「返してよ、圭」
「ごめんごめん。でも来ないなー、返信。お昼休み終わっちゃったのかな」
「はぁ…何送ってんの。迷惑になるからやめて」
「ヤキモチ?」
「そうだよ」
「もう、ラブラブなんだから。でもお姉ちゃんさんのお店で買いたい物あるのは本当だよ?」
「私も行くから」
「はいはい」
ーーー
「ずっと疑問だったんですけど…恵飛須沢さんってなんでここに決めたんです?」
「なんですか、いきなり。それともう昼休み終わってるんですけど」
「まあまあ。お客が来るまでの世間話ってことで」
「なんでそうなりますかね」
「暇なんですよ、後ろの棚の整理だけしてるのって。あと敬語はいいですよ?私の方が年下ですし。あっ」
「え……ってあぶね、ちょっとしっかりして下さいよ!喋りながらやってるから」
「す、すみません。これ上には内緒で」
「内緒にすると思ってます?」
「ヒィ!恵飛須沢さん怖い」
「扱ってる物が物なんだから大切にしねーと」
「はいぃぃ」
すると後輩は小さくなった。
溜め息が出そうになりながらも落ちそうになったパッケージに傷がついてないか確認して棚に入れる。
「あまり私語は慎むようにね」
背後には先輩が立っていた。
後輩が凄い冷や汗をかいてるのが分かってしまう。
「あ、あの。いつからそこに」
「来たのはついさっき。でも会話は聞こえてたわよ」
「ですよねー。すみません。あたしは止めたんですが」
「あ、恵飛須沢さーん!」
「恵飛須沢さーん!じゃないでしょ。フロアの商品、全部覚えてくれたのかしら?」
「覚えました、よ」
覚えてないな。
なんとなくそんなことを思いながら持ち場を離れる。
確かストックがなくなりかけてた商品があった筈だ。
その時、聞き覚えのある声が聞こえて来た。
そういえば今日来るとか来ないとか言ってたっけ。
この間、このフロア全体はリニューアルして商品全体が置くスペースをシャッフルした。
それに気づいた2人はあたしを見つけて声をかけて来た。



「お姉ちゃんさん、大変だよ!何がどこにあるのかわかんない」
「ちょっと圭」
「え、だって美紀だって欲しい物あるって言ってなかった?もしかして欲しいのってお姉ちゃんさん??」
「黙ろうか、圭」
「それでお客様。何が欲しいんです?」
「栄養食品。美紀は?」
「え……私は今度でいいよ」
ちらっとこちらを見て美紀がそう言う。
そんなことはないだろう。思ったが、本人がいいと言ってる以上、深く詮索はしないことにした。
「そう。でも売場ガラッと変わってるから位置だけでも教えようか?」
「それ!どうしてここまで変えたの」
「あたしに聞かれても。栄養食品はあっちですよ」
「あ、ありがとうございますー。あれ?種類が減ってる??」
「ん?減ったんだ」
「減ってるんだよ、美紀!」
このまま行くとあたしまで絡まれそうで早々と立ち去ろうとした。
「あ、胡桃さん」
「はい?」
なんだよ。呼び止めんなよ。
内心でそう思いながらも身体は嬉しがっている。
尻尾でも生えていればゆっくりと振れている、そんな感じだ。
「あの、やっぱり場所だけでも把握しておきたいかなって」
「そうですか、お客様。それで何をお探しで?」
すると周りを見渡しながら小声で。
「あの、ですね。その…」
「あー……こっちです」
圭が私ここで待ってるよーと言って手を振っていた。
正直、美紀にその声が聞こえていたかは疑問だ。



「あ、新発売のリップだ」
「お客様ー」
「ご、ごめんなさい。あれ?」
「カゴ。いりますよね?」
言って美紀に渡す。妙な顔をした美紀を見ないふりをして案内を続ける。
「…なんか胡桃さんが胡桃さんじゃないみたいだなー」
「なんですか、それ」
「敬語の所為ですよ。こっちまで調子狂う」
「勤務中だぞ、今」
目を半眼に開いて美紀を見る。
案内し終わると同時に、美紀が口を開く。
「胡桃さん。今度会えませんか」
「分からない」
「え、あ。そう…ですよね。すみませんでした」
「……どうしてもってんなら時間なんとか作る」
「え?」
大事なところは聞いてない。まあその方があたしにとっても都合がいいかも知れない。
その時。凄い音が聞こえた。凄い音?解ってる。何か落とした音だ。またドジったか、あの後輩様は。
「買い物終わったらレジに行ってて。誰もいなかったら適当に呼びつけてどうぞ。ちょっと見てくるから」
「あ、うん」
正直行きたくはなかったが、そんなことは言ってられない。と、先に先輩が後輩のところに行っていた。
惨状は酷かった。
「あ、恵飛須沢さんは会計お願い。ここはひとまず私がなんとかしとくから。ね?」
「あの落としてすみませんでした」
「謝るなら手を動かしましょうか。いや、それも危険ね…貴女はとりあえず奥に行ってなさい」
「先輩1人で平気ですか?」
「ええ、それに今恵飛須沢さんの知り合いの子達が来てるでしょう?」
ありゃ、お見通しか。少し気にしながらも言われた通り、無人のレジへと向かう。
レジから2人が見えたけど、あえて見えないフリをした。ふと目に飛び込んで来た試供品が2人の手に行きたそうに見えたのであとで袋に入れておこう。
「入れさせて♡」
「圭…待ってるんじゃなかったの?」
「さっきの音が気になってウロウロしてたら美紀が見えたから」
「何それ。不審者じゃん」
「まあまあ。あれ?使ってるの私と同じだ」
「そうなんだ。ホラ、レジ行くよ」
「淡白だなあ。てか、カゴに入ってるの私の買い物の方が多い??」
「多いね。そんなに買うんだ」
「見たら買いたくなる、それが祠堂圭だよ」
「自分の分は払ってね。なんかポイントカード忘れてそうだけど」
「大丈夫大丈夫。忘れてなんか…」
「お預かりしまーす」
途中から聞いてたけど聞かないようにしながら、カゴを受け取る。なんか色々ある。学校帰りなのによく買うな、なんて思いながらレジ打ちをする。
「…うーん、ない」
「ない?まさかお金が足りないとかですか、お客様」
「ポイントカードです」
「やっぱり忘れてんじゃん」
「だってえ。あの、お姉ちゃんさん。ポイントカードで割引かないとおいくらになるっけ?」
「このくらい」
レジを指差して言う。圭の顔面が固まった気がした。
「どうするの?」
「美紀の会計先にやってあげて。もうね、美紀がお金関係で厳しいのは目に見えてるから」
「うん。絶対貸さない」
「ね!」
ね!じゃない。圭は今財布にあるお金で買える物を選び出した。別に今日買わなくてもいいと思うんだが、まあ口には出さない。
「おまけ入れといたから」
「おまけ、ですか?」
「試供品の冷えピタ。使って」
「え、私にはくれないの?」
「買い物途中ですよ、貴女は」
「うぐっ」
結局何も買ってかなかった。先輩に呼ばれたのでレジを後にする。
ちらっと振り返ると美紀と目が合った。なんか照れ臭くてすぐに先輩のところへ向かう。
きっと話なんて後輩のことだ。あまり気は進まない。



「あ、おはようございます。恵飛須沢さん」
「お、おはよう。また先に来てる」
「またってなんですか…あ!聞きましたよ。私で賭けてたらしいじゃないですか」
「ん?あー。いつ頃辞めちゃうかってやつかな」
「ひっどい。そりゃここに来た時はヘマばっかりやってましたけど。次はないって言われちゃ誰だって真面目になりますよ」
「うん、あのね?普通は次はないとか言われないの。解る?OK?」
「私、もしかして天才?」
「天災だよ、馬鹿」
「恵飛須沢さんのバカヤロー」
あれからまた半年は経ったか。五月蝿い後輩はまだ職場にいる。辞めて欲しいとは思ってないが、慣れて来たせいかあたしによく絡んでくる。
「大体あんた、ヘマばっかり言ってるけどその時から首の皮1枚で繋がってたようなモンだからな」
「えー」
「フォローは主に先輩だし。ストレス半端なさそう」
「あ、フォローと言えば。友達がSNSでフォローした人が取引先の人らしいってこの前言ってたんですよ」
「ねえ、お願い。話、聞いて」
フロアに出るまでこんな会話が続く。そうだ、止めて欲しいのはその性格だった。
「おはよう」
「「おはようございます」」
先輩はもう来ていた。時刻は9時を少し回ったところか。ここの時計はあまり正確じゃない。自分の腕にある時計を見る。かなり進んでいた。
「どうしたの?恵飛須沢さん」
「いや。時計って一旦狂うと面倒だなって」
「あ、それ解りますー」
フロア内を軽くチェックしながら開店を待つ。
開店と同時にお客が来ることは滅多にないが、たまにあると言うから油断ならない。
そして今日はその日だった。



決まり文句のご来店ありがとうございます、が流れる。
同時に見えた客は、あたしを見て手を挙げた。
なんで来てんの。正直思ったが、客だ。応対しない訳にはいかない。
「いらっしゃいませ、お母様」
「そこはお客様じゃない?ところで店員さん。風邪薬探してるの」
「あれ?まだ家になかったっけ?てか、家の近くに薬局なかったっけ?」
「薬局はお弁当屋さんに生まれ変わっちゃった。風邪薬、家には少ししかないのよ」
「風邪、引いてるの?」
「お父さんがね」
「そっか。症状は?」
「熱喉鼻全部かしらね。重くはないけど」
「ん。全部だったらこれ。買ったら帰るんだろ?」
「貴女と少し話したいことあるし少し時間潰してるわ」
「マジ?昼過ぎまでかかるよ?」
言ったが聞き入れてくれない。なんだ、話って。来月でアパート出て実家に戻ること根に持ってる?いやいや、まさか。アパートの契約年数は事前に言ってた筈だし、そんなことはないだろう。
「貴女が真面目に働いてるところ見るの初めてだからお母さんにっこり」
「解ったから。時間来たら連絡すっから」
なんか恥ずかしさで変な汗が出る。その様子を見てまたニコニコしている。落ち着かない。
「恵飛須沢さん、どう?」
「あ、会計行きます」
後ろからのプレッシャーが凄い。なんかもうこの場から消えたかった。
母さんの買い物を済まそうとレジへと進む。
「ねえ、胡桃。ここに来てからちゃんとやってる?貴女強がり言うから私心配よ?」
「やってるよ」
「ならいいけど」
納得してない言い回しで会話を終える。話とやらと関係あるのだろうか。そう思いながら風邪薬をバーコードで読み込む。
「お客様、ポイントカードは」
「あるわよ、はいどうぞ」
「失礼します」
「ポイント使うわ。今日は可愛い娘とのデートだから♡」
「そうなんですか?」
「こら、仕事中でしょ」
よりによって後輩と先輩に聞かれる。まあ、先輩はまだいい。後輩に聞かれたら昼休みは可愛い娘さんだって、どんな人だろうねなどとその話題を引っ張るに違いない。
「そうなの。って言っても目の前にいるんだけどね」
このお母様は。



あのあと、話を聞いていた先輩達が気を利かせて少し早めに仕事を切り上げるように言ってくれた。と言うよりも。
「恵飛須沢さんあまり有給の使い方下手だからね。少しゆっくりしなさい」
うーん、別にそんなつもりはないのだが、気がつくと余っている。やはり下手なんだろう。半ドンは気が引けたが、ここは先輩の気持ちに甘えることにした。
「胡桃、少ししたら温泉行くから」
「え?なんで」
「ちなみに美紀ちゃんもOKだって」
「聞いてよ」
合流したあたし達は同じ建物内にあるフードコートで話とやらを聞いていたのだが。
「数ヶ月後には美紀ちゃんの誕生日じゃない?私達夫婦と直樹さん夫婦で温泉旅行プレゼントしようって流れになってるのよ」
「えー、そんなの知らない」
「そういう胡桃は美紀ちゃんにプレゼントするんでしょ。指のアレ」
「なんで知ってるの」
「直樹さんの奥さんにちょっと」
「黙っててって言ったのにー」
「それで、いいのよね?」
「いいよ、もう。てか、半分お金出させてよ」
「気なんか遣わなくていいのに。まあ、そう言うならお願いしようかしら?指輪も結構値段したんだろうに太っ腹ね」
「はっきり言わないでよ」
「指のアレ」
「………今から予約取れんの?」
「任せなさい」
それからは数ヶ月後に迫った誕生日まで特にこれと言ったこともなく、あたしがアパートを解約して実家に帰った時に丁度美紀が家に来たりしたこともあったけど、何か言うより早く向こうが言葉を発した。
「なんでいるの!?」
「なんでってここ、あたしの家なんだけど」
「そ、それはそうなんだけど。だって…あ!何か用とか?」
「それは美紀じゃないの?今日はどうしたの。それと早く玄関から上がろうな」
手を差し出すと途端に顔が赤くなる。もう一方の手で頭を撫でてみる。可愛い。
中々玄関先から帰って来ないあたし達を母さんが声をかける。
そんな感じだ。



「本当にいいのかな」
「いいんだよ。この旅行の主役はお前なんだし、思いっきり羽伸ばせば。それでなくても親達は羽伸ばす気満々なんだから」
行きの新幹線で言った言葉だ。明日は美紀の誕生日。それに併せてプレゼントも預かっていた腕時計も返そうと思っていた。
ただ、腕時計の時間は狂ったままだった。いつでも直しに行けた筈なのにそのままにしてしまった。悪いと思いつつ旅館に着く。
かなり立派なところだった。ロビーでチェックインを待っている途中に美紀に声をかけられる。
「あの、胡桃さん。え、と」
「部屋で聞こうか?」
「…うん」
頭を撫でる。最早何も言わない。言わないし、なんなら頭を撫でられに美紀がこっちに来てるようにも見える。流石に声には出さないが。
「胡桃は段々部屋の鍵が欲しくなーる」
「ん、さんきゅ。母さん達の部屋はどこ?」
「突っ込みないとかお母さん悲しいわー」
「どこだって聞いてんだけど」
「皆隣同士よ、大丈夫。2人の邪魔はしないから。ねえ、奥さん」
「そうねえ」
「邪魔って何!お母さん!!」
「美紀、抑えて抑えて」
その後、親達に明日の予定を聞かれた。行きたいところがあるから一緒にどうだと言う。どうだも何も折角の旅行に一緒しない手はないだろう。
それともそんなにあたし達が2人だけで過ごしたいと思われているのだろうか、この人達には。
「もう、さっきといい今といい」
「まあまあ…部屋綺麗だぞ。畳の匂いが凄い」
「ホントだ。そういえば、和室なんて修学旅行以来かも」
「あー、あたしも。家の和室なんて日焼けしちまってるんだよなー」
「そうそう。日焼けした畳は元に戻せないし」
「それで?」
「え?」
「部屋で聞くって言ったあれ」
言って思いっきり抱きしめる。ずっとこうしたかった願望が強くて、抱きしめたらなかなか離したくなくなってきた。
「胡桃、さん」
ついでに目の届く範囲で痕を残しておいた。残す度に、くすぐったく身をよじる美紀。そんな姿も可愛くて何も考えられなくなる。
「……あ。ゴメン、一瞬意識がどっか行った」
「一瞬」
「ゴメンて。話聞くから許して」
「あの、お借りしてた腕時計なんですけど。その」
「あー。今交換する?そのかわりプレゼントは明日じっくりな!」
「傷付けちゃって。えっと、弁償するから」
「傷?」
見るとそんなに目立たない。よく見れば解る範囲のものだ。それに。
「あの、胡桃さん?」
「これ、何年か前についた傷だろ?別にいいよ。弁償しなきゃ気が済まない、てのは解るけどさ」
言って、あたしが付けてた腕時計を美紀に渡す。何か言いたい顔の美紀を見ないフリして、折角だから腕時計を付けてあげようとして美紀が口を開く。
「時間、進んでるよね」
「あ、バレた」
「えーと……あれ?結構進んでる、のかな」
「悪いな、直しに行こうとは思ってたんだけどどんどん後回しにしちゃって」
「いいよ。私だって傷付けたままだったし。これでおあいこってことで」
「ありがと。あのさ、今日一緒に寝ない?」
「え、はい」
「あ。意味解ってるよね?念の為」
「解ってますよ。言わせないでよ…あと、顔。ニヤけ過ぎ」
ニヤけてないよ。言ってもよかったけど頭撫でて抱きしめてた方が幸せだったからずっとそうしてた。
「ねえ」
「…何?」
「露天風呂入るの?」
「部屋についてる内風呂で済まそうかなって思ってる」
「あたしに遠慮しなくていいよ」
「してないよ。元々ああいう雰囲気は苦手なだけ。内風呂だって景色凄い綺麗らしいから」
「それは楽しみ。あたしもそっちにしようかな」
「え、でも」
「いーのいーの。美紀がいない露天風呂なんて入ってもつまらないし」
「そっ、〜〜もう!」
「それともお風呂も一緒に入ってくれるの?」
「プレゼントのヒントって何か言ってくれないの?」
「無視かー」
ヒントなんて言ったらすぐに解る。
抱きしめる力を強くして、幸せに浸り続けた。



「胡桃さん?ちょっと胡桃さーん」
「え?な、何」
「寝てた?」
寝てない、などと言えないでいうとまだ寝惚けている頭に喝を入れられる。
「美紀?」
「寝てた胡桃さんが悪いんだよ」
だらしない顔してるんだろう。それでもあたしはいいと思う。
「そろそろお風呂入るか?あ、美紀から入れな」
「え、胡桃さんから入ってよ」
「あたし、まだ、眠い」
「仕方ないなあ」
「……なあ、なんですぐにあたしのこと起こさなかったの」
「いーじゃん。そんなの」
「あたしの寝顔見てたかった、とか…あ!お前まさか襲っ」
「てないよ、馬鹿」
言ってお風呂場の方へ行ってしまった。寝顔の件については何も言ってこなかったから見てたかったと言うのは強ち間違いないんだろう。
「可愛いヤツ」
と、そこで美紀のバッグに目がいく。明日は明日で午前中は親達と観光?に一緒するのが決まってる。
いや、時間は決まってない。今のうちに聞いておこう。
〔決まってるわよー〕
「あ、そう。てか教えてよ。どこ行くのかぐらい」
〔秘密。それはそうと部屋隣なんだからそのくらいの用事なら来なさいよ、こっちに〕
「や、だって…美紀がお風呂入ってるし」
〔一緒に入りたかった?〕
「切るね」
〔ああ、待ちなさいって〕
「全く……最近変な冗談ばっかだな」
自分のバッグからプレゼントを取り出して、美紀のバッグに入れて置いた。
人の物を勝手に開けるというのに少し抵抗があったけれどなるべく中身は見ないようにしてたし、もしそれで怒られたら土下座する勢いで謝ろう。
暫くして美紀が出て来た。
何も言わないでいると、美紀があたしの頭を軽く叩いた。
「…早く入んなよ」
「あ、ああ。うん。浴衣、似合ってる」
「いーから、そういうのは後で。早く行って」
照れてるなー。まだ色々言いたいことはあったけど、美紀の言う通りにして置いた。
いざ、お風呂に入ってみると温泉云々の効能やらなんやらなど、そんなもんは頭に浮かばない。
そう。さっきまで美紀が入っていたんだ。この中に美紀が。
……ダメだ。碌なことしか考えられない。
さっと洗って出た。浴衣も美紀が着ているのを見るのは楽しいが、自分が着るのは気恥ずかしい。
「お、またせ」
「え!?早くない?」
「早く入れって言われたので」
「いや、そんな意味で言ったんじゃ…胡桃さん?」
「浴衣が思った以上に恥ずかしいんだよ。見ないでくれ」
「そんなこと言われたら見るよ?」
「言うと思った」
近づいて髪の毛を触ってくる。不思議そうにしていると、だってと言いながら。
「その長さ、あまり慣れなくて」
「長い方が好きなの?」
「私が短いからかな。でも嫌いって訳じゃないよ」
「そ、か」
髪の毛にある手に触れた。これから夕食だ、デザートは食べない。
「さっき胡桃さんがお風呂に入ってる時に圭からメール来て」
「へー。イケメン捕まえたの?いい加減」
「いや、明日忙しいから今のうちに誕生日おめでとうって」
「イケメンは?」
「もう圭も諦めてるんじゃないかなあ」
イケメンがいそうだから、そんな理由で美紀と同じ大学、同じ学部へと進学した圭。勿論そんなのは建前で他にやるべき夢なりなんなりがあろうと思っていた。
実際にはなかったらしい。詳しくは知らない。でもあいつが美紀の側にいてくれる安心感は確かにあった。
「でも諦めてなさそうだよなー」
「圭の性格は同性異性嫌われないタイプだから大学でも上手くやってるしね」
「お前は?最近連絡くれないじゃん」
そこに夕食が運ばれて来た。運ばれて来るご馳走を見ながら美味しそうな匂いに唾を飲み込む。
「ちょっと忙しかっただけだよ」
「バイト?色々やってんだっけ?履歴書の時点で落とされそうとは前に言ってたけど」
「バイトもあるけど上手くすれば大学在学中に仕事出来るから」
「へー、どんな?」
「秘密」
「なんだよー。教えてくれてもいいじゃん」
「まだ決まった訳じゃないから」
それまで何も言わなかった女将さんが、こちらを見て美紀が大学生だと判るとあたしの分だけの日本酒を置いて行った。一言、足りなかったらお申し付け下さいとのことだ。
あたしだってそんなに飲む方ではない。1本だけで充分だった。



「お、これつまみにいい感じ」
「胡桃さんってお酒強いの?」
「んー。弱くも強くもないけど。今日はそんなに飲まない」
「そうなんだ?」
「目の前にデザートあるからな。その分残しておかないと」
「デザ、……もういい」
相変わらずこういう反応は可愛らしい。あまり弄るのも可哀想なので可愛いと思ってるうちに止めておくけど。
「美紀はお酒どうなんだろな。1口でダメになるタイプだったりとか」
「うーん…それでも暫くアルコールとかは取らないと思うけど」
「って言うけど、飲めって言われる時が来るぞ?」
「それはまあ。でも1番最初に飲む時は…あ、なんでもない」
「最初に飲む時?あたしの前とか?」
「なっんで!胡桃さんっは!!そう、やって!!!」
図星か。
喜んでいいのか悪いのか。
夕食を終えて片付けて貰って、布団も敷いて貰う。
フカフカの布団にダイブすると忽ち眠気がやって来る。
「このまま寝ちゃいそう」
「いいの?デザートは」
「食べるよ。寧ろ食べさせてよ。今動きたくない」
「え!?わかんないよ、私」
「ごめんごめん、おいで」
「〜っ、あの…こういうの、他の誰かとしたことあるの」
「あ、美紀の下着エッロ」
「聞いて」
「……ないよ」
「ホントに?」
「うあー、下もエッロ」
「ねえ、真面目に聞いて」
「聞いてる聞いてる」
「勝手な想像だけどあるのかと思ってた」
「頭が猿で止まってる馬鹿なんか身体目当てだからな。付き合う気にならなかった」
「そう、なんだっ〜……ちょっ胡桃っさ、ん。どこ触って」
「え。このくらいでそんな声出しちゃうの?あたし抑え効かないよ??」
「我慢くらい出来る、もん」
顔をあたしの胸に埋めながら言うセリフじゃないと思いながら、美紀の耳に口を近づける。
「顔見せて」
見せてくれた顔に鼓動が早くなる。もういい歳なのに、美紀が欲しくて堪らない。



「ねえ胡桃さん」
「ん」
「胡桃さんだって人のこと言えないくらい下着大胆だと思うんだけど」
「いつの間に見たんだよ」
「さっき」
少し落ち着いたと思っていたところに言われた言葉。目が合った時に唇を重ねて抱きしめる。
「なんだよー、いいじゃん。別に」
「ダメなんて言ってないよ。あの、さ」
「うん?」
「旅館の人達にはバレちゃうよね、その私達が…えと」
「いやいや、バレてなんぼだろ。ところであたし、もう1回したいんだけど」
「そんなの一々口に出さなくていいよ」
「大好きは?」
「出してよ」
「うーむ、ここは敢えて愛してると言おう」
「敢えてかぁ」
さっきので美紀の弱いところは知れた。重点的に攻めるとすぐに我慢しているのが目に見える。
「声出していいよ」
「でもっ、私…まだ、胡桃さんに…満足して貰ってっ、ない」
「あたしは満足してるよ。ホラ、ギューして」
ギューされると同時に、頭が働かなくなる。なんとか足を踏ん張ろうとした。その様子を見てあたしが最も弱い部分にキスされる。
「ここ、だよね?」
「ふぁ…ううっ、ちが」
「違くないよ」
我慢なんか出来なかった。それから2人して獣のようにただ単に貪る。時々交わされる言葉は殆ど喘ぎ声によって掻き消された。
「平気?眠くない??」
「眠いけどその前にホントにないよね」
「んー?」
「だから、誰かとこういうことするの」
「しないよ。信用ない?」
「だって……その、気持ちよか…何言わせんの」
「えー…うーん、その1人ではしてたからなぁ。何言わせんだよ」
「同じこと言ってる」
「ハイハイ、日付変わってるし誕生日おめでと!」
「え、あ。ありがと…実感ないや。起きたらプレゼントくれるんだよね?」
「え、そうだなー。とりあえず今日…今日?まあもう寝よう。おやすみ」
ぎゅっと抱きしめて眠りにつく。朝起きて1番最初に美紀の笑顔が見たい。そんなことを思いながら瞼を閉じた。



起きたくなくても、習慣てのは怖い。ぼけっと4時過ぎに起きてしまう。横を見ると寝息を立てて眠る美紀の姿を確認。
無駄に起こすことはしない。しないが、何もやることがないので結局美紀を見て過ごすことにする。
「んぅ…おはよう」
「さっきまでスヤスヤ寝てたのに」
「おはよう!」
「ハイハイ、おはよう。身体平気か?あと何も着てないのは流石にヤバイぞ。着とけ」
言って側に脱いだままだった浴衣をかけてやる。何か言いたそうな顔をして、結局何も言わないであたしに抱きつく。
「……プレゼント」
「うん、の前にちょっとお手洗い行ってくるな。起きるまで待ってたから今限界d」
「早く行ってきてよ」
「すぐ戻って来る」
軽くキスして出て行く。全く、困ったヤツだ。あたしの思考回路はもう美紀しか考えられなくなってる。トイレに逃げ込んでも逃げた意味なんてある筈はなかった。
いつまでもトイレにいたくない。そろっと戻ると美紀は行く前と同じ格好のまま座っていた。
こちらに気づいた途端、小さい声で一言。
「なんでこういうことするかなぁ」
一瞬意味が分からなくて、黙っていると何かを投げつけてきた。あたしが仕込んだプレゼントだった。
「別に人の物勝手に開けるなとかじゃなくてさ。プレゼントの中身」
「あー…うん。なんでだろ、冷静になればよかったのかも。あの時は冷静じゃなかった」
「サイズなんて教えてないんだけど」
「そこはホラ、魔法使いが教えてくれたんだよ」
「魔法使いとか…恥ずかしいなぁ、30にもなって」
「まだ30じゃないって」
「ちょ、つけるの!?」
「つけてくれないの?」
「だからそういう聞き方ずるいよ」
ずるいかどうかは知らないが、美紀の指にすっぽりと収まったそれにいつも以上に顔がニヤけてしまう。
「なんかこれって、」
「言わなくていいよ」
「えー。そうそう、あたしは自分でつけたんだけどさー。ちゃんとついてるよね」
「え」
「なんならもう1回あたしのは誰かにつけて貰ってもいいんだけど。早くしないと朝ご飯の時間になっちゃう」
「つけるつけないとか今はいいよ。それどうしたの」
「深い意味はないってば」



「ダメだー。詰まった」
「休憩しな。糖分糖分!ほれ何か作るからリクあったら言ってみ」
「ありがとう。なんでも言っていいの?」
「おー。冷蔵庫の中にある物の中からになるけど」
「じゃいいや。胡桃さんに抱きついてれば糖分摂れるもん」
「こりゃ完全にダメコース?今回は何やってるの」
「胡桃さんに言っても解んないやーつ」
「あってめ、おい寝るな!せめて寝室行ってから」
寝てしまった。昨日も遅くまでパソコンと睨めっこしてたみたいだし、しょうがないかとも思う。起きないように座り直して、目に飛び込んできたのは数枚の写真立て。
美紀の20歳の誕生日に旅行に行った時、親達が行きたいと言ったのは写真屋だった。確かデカくなってから一緒に撮ったことないでしょ?なんて言ってた記憶があるが、あたしと美紀のツーショットも撮りなさいっていう圧力が凄かった。
あれからもう数年は経ったのか、早いものだ。街は何も変わってないのに、あたし達を取り巻く周囲は少しずつ変わっていた。
圭は漸くお眼鏡に叶うヤツを見つけたらしい。写真を見せて貰ったが、イケメンとは程遠かった。優しいんだから文句ないよねとは言ってたが、そもそもあたし達は文句なんて最初から言ってない訳で。
美紀は大学の時からお世話になってる教授を通して知り合った会社で働き始めた。主にデスクワークだがこうして仕事を持ち帰って来てる辺り、美紀の性格なのかブラックなのか。
そんな中、あたしはあまり変わってないんだと改めて思う。後輩は相変わらずだし新しく入って来た人達とは仕事以外でそんなに交流はない。仕事でも時間が合わなければ全く話もしない。
1回、後輩と話をしたことがある。ずっと後輩とは同じ時間に働いてる気がしていた。
「嫌でした?」
「……なるほど。別にいいけど」
「恵飛須沢さん、思いっきり顔に嫌だって書いてますよ」
溜め息を吐きたかったが、そんな暇はなかった。
携帯が震える。こちらも一瞬震える。今ので起きたかな、とも思ったけど起きそうにもなかった。
「何?」
〔何?じゃないでしょ、解ってる?〕
「うん」
〔ならいいけど。ちゃんと当日連れ出すのよ〕
「解ってるよ」
〔それじゃ。胡桃は下手なところでドジるから母さん心配〕
途中で切った。あの手の話は凄い長くなることは知っている。準備は整えつつある。あとはこいつを……
「っうあっ!?」
「そんなに驚く?」
「油断ならねえな、いつから起きてたんだよ」
「えー。胡桃さんがうんとか解ってるよとか言ってる辺りから」
「マジか」
「相手、お母様?」
「そうだけど」
「ところでさ、私のことどこに連れ出してくれるの?」
油断ならねえな。誰が言うもんか。
「でも早く住みたいな、あの家」
「家」
「………今聞いたことは聞かなかったことに」
「そんなこと出来ると思ってる?」
「ですよねー」
「てか、家?建てたの??いつ」
「細かいことは気にしない。何か軽く作るからそれ食って寝よ」
「あれがいい」
リクが来た。
まあ、あたしじゃないだけマシだ。
作って持って行って2人で食べる。美味しいと言われるだけで幸せになる。
今日よりも明日。明日より明後日。
あたし達はずっとそんな日を続けて行くんだ。
「ごちそうさま」
「ご馳走様。今度私も何か作るね」
「それは楽しみ。それじゃ、寝るかー」
おやすみ。
また明日。


あとがき
年の差は長くなる運命。
書いてるうちにネタが降りてくるのも困りものですねー。
ま、りーくる同様書いてて楽しかったですよ。
楽しくなかったらこんなに長くなりませんし。
[ 2018/07/20] がっこうぐらし!SS |